鼻が折れると鼻血が出る

鈍器で顔を殴れば鼻は折れるし、誰かのために行動すれば社会は変わる。仕事も執筆も想いを込めて。

現地法人がまともな会社か見抜くための質問

「個人的な関心なのですが、海外で働くということについてお伺いしても良いでしょうか。○○社長は、異国の地で社長をされているわけですよね。日本で培ってきたご専門とは別に、会計や法務など幅広いご責任を持たれていらっしゃると思います。法律や会計制度の変更などはタイ語で発表されると思うのですが、日々どのように情報収集されてますか?」

 なぜ上記の質問がタイ現地法人が、まともな運営をしているか見抜くことにつながるか解説する。

 

【そもそも全体的にタイ現地法人の運営は適当】

 タイ現地法人は、日本本社では営業職や技術職一筋であった日本人が、社長に着任するケースが大半である。すなわち今まで経験したことこのない新たな職責に挑戦するわけである。

 しっかりと経営、人事、タイの会計や労働法などの法律を勉強する人とそうでない人にはっきりと別れる。残念ながら、そうでない人も多い。やはり、労働者としては、しっかりと法律(特に労働法)を守る会社に入りたい。

 例えば、タイでは今年の5月19日(施行日)から用事休暇(役所など本人しかできない手続きのための休暇)の3日以上の付与が義務化された。用事休暇の趣旨からすると、日本の市役所で手続きをする、免許を更新するなどの理由で帰国する時にも利用できると考えられる。したがって、実質的に法定の有給休暇が3日増えたようなものである。

 労働法をきちんとキャッチアップしている会社は、法律の草案が発表された段階で、施行と同時にオフィスレギュレーション(就業規則)に用事休暇を入れる手筈を整えている。しかし、こういった労働法の改正を全く把握していない会社も少なくない。むしろ、中小〜中堅企業の大半は把握又は対応をしていない。

 

【想定される質問の答え】

 手前味噌ながら私の会社はコンプライアンスにかなり敏感である。仮に社長に対して冒頭の質問をした場合、こう答えるであろう。

「タイ人のコンプライアンスマネージャーが常に法改正を追っている。法律事務所や会計事務所の有料のセミナーにも出席させている。私自身も各種のニュースやメールマガジンを見て、幅広く情報収集しており、気になる話題があれば、ニュース情報以上の詳細を調べるよう日本人の部下に指示をする。社長の私に加え、タイ人のコンプライアンスマネージャーと、法律や会計に詳しい日本人の部下を中心として最新動向は常に把握している。」

 さすがにここまでちゃんとしている会社は少ないであろう。しかし、以下のような返答は期待したい。

・バンコク日本人会商工会議所の勉強会など、気になるテーマのセミナーに出ている
・顧問の会計事務所との毎月の打合わせの際にそういった知識をもらっている
・バンコクポスト(英語のビジネス新聞)を読んでいる
・フリーペーパーやニュースマガジンをチェックして、気になる話題はタイ人に対応させている

 逆にダメな回答は、「タイ人に任せている」である。社長自身が主体的に情報収集していない場合、タイ人も積極的には情報を報告してこないであろう。また、そもそも経営上の重要イシューについて自ら情報収集しないというのは、社長としての資格に欠ける。

 

【労働法を遵守する会社に入るべき】

 極端な例であると試用期間中は労働許可証(ワークパミット)を支給しない会社もある。これは明確に不法労働であり、発覚すると罰金および国外退去のリスクもある。

 これは経験則なのだが、労働法を遵守する会社は、昇給やその他の福利厚生もしっかりしているケースが多いように思う。すなわち、会社の構成員たる従業員に対する心構えの問題である。

 労働法について言及することは、諸刃の剣である。権利だけ主張する奴と思われるリスクはある。しかし、タイミングや言い方に気をつけ、用事休暇について聞いてみるのも一案である。法令遵守をモットーにしている会社であるならば、自慢げに「当然。私はそういうのしっかりやってるからね」と答えるであろう。

 もちろん、福利厚生一切なし、解雇あり、労働環境は過酷、しかし給与は超高給のような会社も魅力的ではある。しかし、そういった会社はまれである。また、初めからその条件を覚悟して就職するので問題はない。しかし、普通の会社と思って現地採用として入社したら、コンプライアンスが杜撰な会社であったというのは全力で避けたい。

 現地採用は、異国で働くマイノリティーであり、ただでさえ後ろ盾がないのである。労働者保護についてしっかりした考えのある会社に入りたい。