鼻が折れると鼻血が出る

鈍器で顔を殴れば鼻は折れるし、誰かのために行動すれば社会は変わる。仕事も執筆も想いを込めて。

海外就職における給与交渉〜日本での転職とは事情が異なる〜  

 日本から日系企業の海外現地法人に就職する際の給与の交渉について書く。日本で転職する際とは、状況が異なるため注意が必要である。

 

【希望年収は早めに伝える】

 日本における転職の際の給与交渉では、早いタイミングで自分から希望給与を提示するのはNGと言われがちである。もっとも、これは日本の中堅〜大手企業を前提としたセオリーである。これらの企業では、年齢やポジションによって、給与テーブルがあり、大枠はそれに従うことになる。したがって、給与交渉はないケースもあるし、最後の擦り合わせ的な位置づけになりがちである。

 しかし、日系企業の海外現地法人には、日本人の給与テーブルは存在しない。あったとしても、あまり意味をなしていない。採用者の責任者(ほとんどの場合は現地法人社長)は、自身の感覚となんとなくの相場観から新たに採用する日本人の給与のオファー額を決定する。すなわち、日本人現地採用の給与は現地法人社長の感覚によって決まると言っても過言ではない。

 採用者は、面接の前には既に現地採用の日本人の給与相場を把握している。そして、経歴書も見ている。したがって、面談の最中には、この候補者にはこのレンジの給与であろうという感覚が出来上がっている。

 時と場合にもよるが、最初の面談の終わりに、希望給与の提示、あるいは会社がオファーできる給与のレンジを聞くべきであろう。語弊を恐れずに言うならば、海外の現地法人には待遇の良い会社はない。良い待遇を掴み取れる会社があるのみである。
(もちろん、現地採用の日本人が高待遇で雇われている会社もある。あくまで意識の持ち方程度に捉えて欲しい。)

 

【人材会社との役割分担】

 なるべく早い段階での給与提示が好ましいと思うが、なかなか難しい場合もある。最初の面談がSkypeである、一次面接ということで役職が下の担当者が出てくる、単純に聞きづらかった、など様々なケースがあろう。その場合は、人材会社から希望給与を伝えてもらう、あるいは会社側がオファーしても良いと考えている金額を聞いてもらうと良い。

 給与の交渉は人材会社にすべて任せても良いし、自身で行っても良い。正解はない。1つの戦略として、「最低希望給与額は人材会社を通じて伝え、給与交渉は自分で行う」という手がある。

 人材会社にとって、企業は顧客である。ハードなネゴを期待するのは難しい。したがって、ぎりぎりの交渉は自身で行うべきである。例えば人材会社には最低月給7万バーツを前提として、給与交渉に臨むお膳立てをしてもらう。そして、他社の選考状況、自身の意欲、自己PR、その会社の福利厚生の薄さ、前職の年収など、様々な材料を駆使して8万バーツでの交渉の妥結を目指すのである。

 

【提示金額は現在の給与を基準にする】

 まず、現在いくらもらっているかと、海外現地採用でいくらもらえるかは関係ないという姿勢で交渉すべきことを心に留めておきたい。現職で英語を使って、転職先と同様の職務を行っているケースはまれである。海外就職は未経験の業務への挑戦という面が、日本での転職に比べて大きい。

 その上で、自身の個人的な問題として、前職から年収が○割以上落ちる決断は難しいですと低姿勢で伝えるのである。

 実際のところ、現地採用の給与交渉は、いかに先方のオファー額と自身の希望額の差を埋めるかという勝負になる。現職より数割落ちるオファーを受けるケースも多い。先方が自分に魅力を感じてもらっていると思ったら、積極的に(直接的あるいは遠回しに)希望を伝えて、高めのオファーを出すようプレッシャーをかけたい。

 

【時には説得が必要】

 「給与交渉は説得ではなく納得」

 この言葉は給与交渉における鉄則である。自分の付加価値の高さを説得しようとする発言は、相手の気をよくすることはない。

 しかし、海外就職の給与交渉においては、時には説得も必要である。国内で転職する場合、相手は採用の経験者であり、社内規定によりある程度の枠組みが決まっている。その候補者をどう社内の給与テーブルに当てはめるかの決定を担うに過ぎない。

 一方、日系企業の海外現地法人の場合、そもそも採用責任者が、場合によっては会社自体が、現地採用の日本人を初めて採用するケースも少なくない。駐在員として赴任し、片手間で採用する場合、現地採用の日本人の困難についてきちんと理解をしていない。

 最終的には相手の納得に向けて話を進めていくことは必要である。しかし、時には説得をするように熱弁を振るうハードな交渉も覚悟すべきである。基準や前例がなければ、人と人の交渉が年収決定に際してより重要となる。日本のように、御社の社内規定に従います、というわけにはいかない。

 年収の交渉は自身で行っても、人材会社を間に挟んでも心理的にハードである。自身の価値を議論するわけであり、時には心も折れるであろう。しかし、一時の交渉が、今後の人生の給与のベースを決めるのである。特に日系企業はパフォーマンスが高くても大幅に昇給しにくいためなおさらである。この投稿が、あなたにとって、悔いのない給与交渉の一助となれば幸いである。