鼻が折れると鼻血が出る

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司法試験に不合格だった人は海外に目を向けて欲しい

 

まず、最初に言いたい。

 「法科大学院(ロースクール)を出て、司法試験に受からなかった。」
「法学部を卒業したけど弁護士になっていない」

 この両者は、似て非なるものであり、絶望するくらい深い溝がある。しかし、世間的には大差がない。繰り返すが、法科大学院(ロースクール)も法学部も世間的には、「法律を勉強していたのね」くらいの理解なのである。

 例えば会計大学院について、知っているだろうか。会計大学院を出て一般企業に勤めている人に対してどのような印象を持つか。おそらく、なんの印象もないであろう。

 自分にとって、根深い問題であっても門外漢からすれば、全く関心がない。たいていの悩みは、その程度のものである。冒頭の問いかけは、世間にとってはどうでもいい事柄に過ぎない。

 本題に入る。


✎一流が不在の地で勝負する

 知識を扱うビジネスパーソンであるならば、特定の分野で「一流」を目指したい。しかし、知財の分野で一流になるのは、ほぼ不可能であろう。少なくとも、この記事のタイトルにアクセスしてくる方ならなおさらである(申し訳ないが真実である)。

 しかし、タイの知財にもっとも詳しい日本人の一人、タイにおける「一流」の専門家になることは不可能ではない。4〜6年ほど、ひたすら知財の実務および勉強を続ければたどり着くであろう。

 タイは日本人の層がそこそこ厚いため、4〜6年ほどで「一流」だが、バングラデシュやスリランカならば1〜2年、ミャンマーやフィリピンならば2〜4年で特定の分野の日本人の第一人者、すなわち「一流」になれる。

 なぜか。一流の法曹が途上国に来ることはないからである。相対的にライバルが少ない地、すなわちエリート不在の地で勝負すれば、特定の分野でのフロントランナーになれる。

 弁護士でなくとも法律の知見とスキルで、弁護士に勝てる。もちろん特定の国、特定のジャンルにおいてである。それでもいいではないか。これが海外における日本人の法律職キャリアである。


✎なぜ一流は途上国に来ないのか

 途上国で働けば一流になる道が閉ざされる。

 実は、さきほどから一流と「一流」で意味を使い分けている。一流は先進国で汎用的に活躍できる水準、「一流」は特定の国や分野でのトップレベルとして書いてきた。

 専門的な知見や事例は欧米・日本・シンガポールなど先進国での勤務によって手に入る。途上国では法整備が進んでおらず、そこで手に入るのは最先端の法的な知見ではない。書類を提出したのに手続きをまったく進めない行政にクレームを言うなど、相対的に泥臭い仕事が多い。

 また、各途上国における特有の法律の不備や癖などにも精通する必要があるが、それらを学べば学ぶほど、その国でしか通用しない法律家となる。もっとも、途上国の法律は先進国の法律をキャッチアップしていくため、先進国で培った知見はある程度途上国にて活用可能である。

 一流の弁護士は、途上国における「一流」になることを避けるのである。一流は「一流」になれても、「一流」は一流になれないと考えられている。したがって、一流は途上国での勤務を避け、日本を含む先進国での勤務を志向する。


✎「一流」はローカル知識の蓄積で勝負

 一流は「一流」になれる。

 これは真であろうか。これを詳しく書けば、「先進国で特定分野の知見を培った法律家は、途上国において同分野で活躍できるのか?」と言い換えることができる。

 これは、YESともNOとも言える。さきほども書いたように、途上国の法律は先進国の法律を取り入れて、作られていく。したがって、シンガポールにおける知財業務の知識はタイにおいてもある程度であるが、役に立つ。

 それではNOとも言える理由は何か。これは、言ってしまえば至極当たり前だが、「タイにはタイの法律があり、それはタイ語で書かれている」というものだ。

 どれだけアメリカで有名な弁護士であっても、日本語が読めない弁護士が(海外案件以外で)日本で卓越した仕事ができるであろうか。英語の話せる日本人の部下に日本語の法律や判例を翻訳してもらいながら、仕事をする必要がある。言語、文化および慣習への理解が壁となり、自身のパフォーマンスをフルに発揮できないであろう。

 特定分野で世界における先端の知識を持っていたとしても、その国の法律に詳しく、その国の言葉のできる者には敵わない。

 その国特有の知識や知見を「ローカル知識」と呼ぶことにする。一流は先端知識を持つ者で、「一流」はローカル知識を極めた者である。そして、極めるとは相対的な観点であり、先進国あるいはマーケットの大きな国ほど極める(上位に入る)のに時間や労力がかかる。

 おおよその結論は見えたのではないか。一流は「一流」になれるかは問題(我々の関心事項)ではない。途上国では、いや途上国においてのみ「一流」が一流に勝てる、あるいは肩を並べることができるのである。これが我々にとってきわめて重要な戦略である。

 一流の層が薄い分野で、ローカル知識を溜め込んでいく。これが、「一流」の雑草的キャリア戦略である。


✎途上国の日本人弁護士の苦悩

 敵を知るのは重要である。我らの競合となる日本人の弁護士について考察する。

 弁護士がタイで働く場合、当然、タイの法律を勉強しなければならない。しかし、タイの法律を勉強し、タイでの業務知識を増やせば増やすほど、タイでしか働けない人材となってしまう。タイで得た知見は、日本に戻って役に立つものではない。タイに骨を埋める覚悟でタイに来る弁護士などほとんどいないため、これは非常に悩ましい問題となっている。

 タイでの勤務である以上、タイ人と一緒に働くことになる。タイ語の法律を原文で読むことはできないため、タイ人の弁護士やタイ人のパラリーガルに法律を説明してもらう。あるいは裁判、行政の手続きなど様々な仕事を補助してもらう。

 しかし、タイ人と働くことにストレスを感じている弁護士は多い。残念ながらタイ人は総じてロジックの分野が弱い(少なくともそう感じる日本人は多い)。また、プロ意識も日本とは異なる。

 具体的に指示をしてリサーチを頼んだのにも関わらず、的はずれな内容が出てくる。的外れならばすぐに指摘できるが、「的を外しているのではないか」といった微妙な報告が上がってきた際に、非常にストレスフルな判断を迫られる。自分で原典であるタイ語の法律を読めない以上、タイ人に頼るしかない。しかし、そのタイ人の仕事の質が信頼できないのである。

 さらに、専門性という点において、タイを含む途上国の業務のレベルは低い。

 日本で会社設立の事務を手伝う弁護士はいないであろう。しかし、途上国では弁護士が会社設立をサポートすることも珍しくない。途上国にはほぼ例外なく外国人への事業規制があり、事業内容によっては外国人が会社を設立するのに高いハードルがある。あるいは、事業規制などは関係なく、会社設立を管轄する役所の事務スキルが稚拙すぎて、いっこうに設立登記が進まないケースもある。必要書類が不明確、役所が書類を受理しても賄賂がなければ手続きを進めないなど、弁護士によるサポートが付加価値を生んでいる。

 しかし、付加価値があるといっても、たかが会社設立の事務である。いくらミャンマーで会社設立のノウハウを積んでも、そのノウハウは10年後には無価値になっている。新たな法律が施行され、手続きが変わっているかもしれない。行政が効率化、あるいは通達が整備されて、外国人であっても簡単に法人設立ができる環境になっているかもしれない。途上国ゆえの未整備から発生するサポート業務は、その国が経済成長する過程で消えていく。

 さきほど、タイ(途上国)で得た知見は日本(先進国)で活かせないと書いたが、タイで今得た知見は10年後のタイで活かせない可能性すらある。

 さて。以上から何が言えるか。

 途上国における就業環境はエリート弁護士、一流を目指す弁護士にとっては好ましいものではない。一方、タフでないひ弱な弁護士が活躍できるほどぬるい環境ではない。

 この隙間の市場で勝負するのはいかがであろうか。隙間とはいえ、上位のレイヤーに食い込んだときのリターンはそこそこある。物価の安い国で、年収1,000万円を超えれば、なかなか快適な生活を送ることができる。


✎雑草の戦略をもって海外で働く

 ところで、道端に生える雑草は非常に弱い植物であるのはご存知であろうか。コンクリートの裂け目など、過酷な環境に根を張り、葉を広げる姿を見て、強靭な生命力のある植物だと勘違いしている人が大半であると思う。

 しかし、実際はその逆である。養分の取り合いに負けてしまうため、他の植物が生息する場所では枯れてしまう。一般的なイメージと異なり、雑草とは競争に弱い植物なのである。したがって、他の植物が生息しないような場所を選んで生きるしかない。

 肥沃な土地にはたくさんの植物が生い茂る。しかし、たくさんの植物が群雄割拠する場合、栄養の取り合いとなる。大事なのはその土地にどれだけの栄養があるかではなく、自分がどれだけの栄養を摂取できるかなのである。

 これはタイ現地採用にとっても含蓄のある話ではなかろうか。タイを含めた途上国は、最先端の知見に富むわけではなく、経済規模も小さい。しかし、強力なライバルもまた不在である。したがって、自分自身の取り分という観点からは、先進国という肥沃な大地よりも、途上国の養分の少ない大地のほうが、栄養を多く取れる可能性がある。

 勝つためには自身を鍛えるのも大事であるが、勝てる場で戦うというほうが有効な戦略となるケースが多い。ビジネスにおいて、競合が少なく優位に立ちやすいマーケットを選ぶことを否定する者はいない。しかし、自身のキャリアとなると途端に「勝てる場所を選ぶ」という選択肢を取る者が激減するのである。非常に不思議だ。

 きっと今日の記事のタイトルに惹かれて、ここまで私の文章を呼んでいただいたあなたは、世界を舞台にトップを目指すグルーバルエリートではないであろう。しかし、秘めたる上昇志向はあるのではないか。

 私は思う。雑草で結構。踏まれても結構。しかし、欲しいだけの養分はもらう。


✎投了するも勇気、続けるも勇気

 もちろん、司法試験不合格の結果を受けて、まだ受験資格があるのにも関わらず、海外で就職するという選択を思いきれる人はまれであろう。また、私としてもそれを安易に推奨するわけではない。

 司法試験は受け続けるにしろ、違う道を選ぶにしろ、勇気が必要だし、選択したあとも迷い続ける悩ましい進路である。また、その判断が正しかったかどうかは一生分からないかもしれない。

 もし、本当に辛くなったら職探しなど一切関係なく、タイに2週間ほど来てはどうか。タイの路上には、何もしていないおっさんが暇そうにダラリと寝転がっている。ぜひおっさんを眺めて欲しい。切磋琢磨とか努力とか合否とか、一切関係ない世界もあるのである。

 タイは心地が良い。マッサージ、飯、海、ゴーゴーバー(裸の女性が踊っている)、ゴーゴーボーイ(裸の男性が踊っている)、サタニーホイ(半裸のマッチョが狂乱しているレストラン)、、、この世の欲望は、だいたい取り揃えている。それがタイ。

 普段の喧騒から離れて、ゆっくり未来を考えると良い。もし、タイへの就職も有りだと思ったら、この記事をもう一度最初から読み返してほしい。また、以下の記事も読んでもらえると嬉しい。

 

〈関連記事〉
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五振後/司法試験投了後のキャリアを検討する② - 鼻が折れると鼻血が出る

 

✎おわりに

 色々書いたが本当に言いたいことは一つしかない。

 生きよ!

 そなたは美しい

 サタニーホイ!


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(サタニーホイの接客の様子)