丸まった勤め人の背中は、諸行無常の理を感じます。
かつて、花形部署にて部下を力強く叱咤激励した言葉。出世コースから外れ、時代も変わり、今も変わらず吐く気勢は、パワハラとして左遷の理由に。
盛者必衰。それとも足蹴にしてきた、若手の怨嗟の声が天に届いたのでしょうか。奢れる人も久しからず。海外駐在、それも現地法人の社長としての任。苦労があったとしても、本当に好き勝手できたことでしょう。しかし、それも3年間、ただ春の夜の夢の如し。
駐在員にも、つひには帰国辞令。ひとへにサラリーマンは辞令の前に抗う術なし。
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当然ですが、人には悩みがあります。キャリアは長い。良い時もあれば、落ち目の時もあります。駐在員も現地採用もそれは同様。むしろ、駐在員の方が落ちる時の落差は大きいでしょう。
さて、私を採用したタイ現法の社長は独裁者でした。彼の名誉のために言えば、志のある独裁者でした。
不運ながら、彼の志は時には評価され、時には酷評されました。彼のキャリアの最後は、酷評の賽の目が出たまま終わることになりました。
一般的に、彼の指導はパワハラといえるものだったのでしょう。私も、特に(いい意味でも悪い意味でも)手厚く指導された人間の一人でした。当時のエピソードを人に語ると「とんでもないね」と言われます。
彼はほとんどの人に、傲慢な人という評価をされており、そこに私も大きな異論はありません。たしかに、彼は傲慢でしたから。
驚くべきことに、彼のキャリアの凋落に対して「ざまあみろ」という気持ちはありません。「残念だな」というのが、偽らざる感想です。もっとも、「かわいそう」だとは思いませんし、また会いたいとも思いません。
無常だなとは思いますが。
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さて、この出来事、私には他人事には思えないのです。
現地採用とはいえ、いや、現地採用だからこその落とし穴があります。
駐在員は入れ代わります。優秀なタイ人に長期間いてもらうことができるマネージメントを実践できる会社は多くありません。
すると、4〜5年目の現地採用は、(努力をきちんとしていることが大前提ですが)実務担当者としては、経験・実力ともにエース級になります。
会社の特定の業務分野にて、自分が一番になる。これは、目指すべき状態であると同時に、危ない状態でもあります。
・そこから先の成長が見えにくい
・奢りやすくなる(が故に、周りを下に見たり待遇の不満が口に出やすい)
・サボっても(全力を出さなくても)まわりにバレにくい
色んな気の緩みがでてきます。もっというと、傲慢になりがちです。この局面にて、奢らずに、努力し続ける。なかなか難しいことです。
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ところで、最近副業について色々検討しています。このブログも、自分が匿名で書いた文章がどう評価されるかの実験という側面も兼ねています。
副業を考えれば考えるほど、本業に感謝の気持ちが芽生えます。
私は残業すれば、1時間あたり600バーツの残業代がつきます。2,000円以上です。仕事自体も嫌いではなく、そこそこ楽しくやっています。少なくとも、向いているなと思います。
ノーリスクで内容にも満足できて、時給2,000円を稼げる副業を構築するのは、かなり難易度が高いでしょう。ていうか、かなり無理ゲーです。
いくつかの副業のアイデアはありますが、「おそらく、ある程度稼げるのでは?」程度です。海外に住んでいて、副業ができない勤務先なので、かなり選択肢が限定されるのも辛いところです。
そうすると、副業にリソースをつぎ込みすぎて本業が疎かになるのは本末転倒です。寝不足などでパフォーマンスが落ちて、「あいつ、残業しているわりに仕事量が少ない。残業せずに帰るように指導しよう」と会社に思われたら、大きな損失です。
もちろん長期的な戦略を考えれば、副業をある程度の収入源にしたいと思っています。しかし、まずは本業のパフォーマンスを落とさないことが最優先です。
改めて、「本業ありがてぇ」と思います。
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なかなか皮肉なものです。本業に不満があり、副業を本気で検討した結果、出た答えが「本業ありがてぇ」なのですから。
傲慢にならないこと。あるいは、傲慢な上司や社長との付き合い方。きっと、感謝に1つの答えがあるような気がします。
日々の仕事、待遇、上司の指示、会社の方針、不満を挙げれば切りがありません。しかし、会社のおかげで今の日々の生活があることも事実です。
会社に依存すべきではなく、自立の道を探りたいとは思っています。
しかし、今の時点では、会社に、上司や社長に、職場の人々に、感謝の気持ちをしっかり持っていようと思います。
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さて、最初の話に戻ります。
きっと私のキャリアも、坂道あり、下り道ありなのでしょう。ただ、1つ確実に言えるのは、無常(変わらないものはない)であることのみです。
もし、ここ一年間、変化がないように感じたら、それは凋落なのでしょう。歳とともに、体力や頭脳は衰えていきます。長期間、新しい知識や経験が十分に蓄積されていなければ、それは停滞ではなく凋落なのです。
左遷された彼は、どういう想いを抱いているのでしょうか。彼はかなりのハードワークで、「仕事=人生」に近いところがありました。そんな彼が人生の終盤で、会社からビジネスパーソンとしての存在価値に「NO」を突きつけられるのは、どのような気持ちなのでしょうか。
答えは分からないし、推測するのも無粋でしょう。彼に聞いたところで、心の奥底の感情を教えてもらえるとも思えません。
彼は彼だし、私は私です。私は明日の朝も電車に乗って出勤し、山積みのタスクをこなさなければなりません。彼への関心は、この記事を書いてる今だけで、暫くすると、消え去ってしまうでしょう。今後、思い出すのは、本当に時折。
さてさて、どこまでいっても、彼は彼。私は私。以下の規律をもって仕事をしていきたいと思います。
感謝を忘れず勤勉に、集中して仕事に望む。
当たり前すぎるフレーズですが、今の私にはもっとも重要な心がけです。
(私によくしてくれたすべての人に感謝)